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2023.10.02
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2022.06.08
「相続する予定の不動産があるが、遠方に住んでいるため売却したい」
「相続予定不動産を早めに処分して現金化するか悩んでいる」
少子高齢化が進む昨今、こうした悩みを抱えている人は珍しくありません。
そこで今回の記事では、不動産売却のタイミングは「相続前」と「相続後」のどちらがいいのか、といったことについてまとめてみました。
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ここではまず、相続前に相続予定の不動産を売却するメリットについて見ていきましょう。
不動産は現物資産であり、公平に分割することが困難です。
そのため、相続手続きに伴う遺産分割協議において、分割方法を巡り親族間でトラブルが起きてしまうケースも少なくありません。
また、ひとりが不動産を相続して他の相続人に代償財産を渡す場合であっても、代償財産の算定や資金確保に伴う問題が生じることもあるでしょう。
相続開始前に不動産を売却し現金化しておくことで、上記のようなトラブルを避けられます。
生前に不動産を売却することで、3,000万円の特別控除が受けられるかもしれません。
通常、不動産を売却すると利益(譲渡益)に対して譲渡所得税と住民税がかかります。
それらが大きな負担であることはいうまでもなく、所有期間によって以下のように定義や税率が異なります。
【定義】
● 譲渡した年の1月1日現在で、所有期間が5年超:長期譲渡所得
● 譲渡した年の1月1日現在で、所有期間が5年以下:短期譲渡所得
【税率の計算式】
● 長期譲渡所得=課税長期譲渡所得金額×15%(住民税5%)
● 短期譲渡所得=課税短期譲渡所得金額×30%(住民税9%)
こうした譲渡所得税を減額するために利用できるのが、「居住用財産(マイホーム)の特別控除」や「空き家の特別控除」です。
それぞれ要件が異なりますが、居住用財産の特別控除は比較的簡単に利用できます。
ただし、居住用の財産の特別控除を利用する場合であっても、この特例を受けるためだけに入居した家屋や、建て替えや引っ越しのための仮住まい、別荘は対象外となるので注意が必要しましょう。
相続前に不動産を売却するメリットがある一方で、デメリットもあります。
そのひとつに、不動産が高く売れることで遺産としての現金が増え、結果として相続税が高くなったしまうことが挙げられるでしょう。
● 相続前に売却:売却利益が課税評価額の対象
● 相続後に売却:土地は「路線価」、建物は「固定資産税」のが課税対象となる(現金よりも評価額が小さい)
また、売却益が出れば出るほど譲渡所得税かかるのではないかと心配される方もいるかも知れません。
しかし、その点については要件を満たしさえすれば先述した「3,000万円の特別控除」の適用対象となります。
課税対象についても売却金額ではなく、売却利益であることからマイホームに供していた物件(3,000万控除の適用対象となった物件)であれば譲渡所得税は変わらないケースがほとんどです。
そのため、相続前か後かで売却を悩んでいる場合、他の相続人ときちんと話をすることをおすすめします。
次に、相続後に売却するメリットを4つ、お伝えします。
● 相続税の課税評価額を圧縮できる
● 小規模宅地等の特例が適用される場合がある
● 空き家の特別控除が適用されることがある
● 相続税の取得費加算の特例の適用対象となる
ひとつずつ、見ていきましょう。
不動産を相続するにあたって相続税の算定がなされますが、土地と建物に対しては以下の評価基準が用いられます。
● 土地:路線価
● 建物:固定資産税評価額
この際、路線価は実勢価格(実際に売却する際の価格)の約80%、固定資産税評価額は実勢価格の約70%で算出されます。
そのため、現金で相続した場合よりも不動産のまま相続した方が相続税評価額が低くなり、実質的に課税額の圧縮に繋がるでしょう。
「小規模宅地等の特例」とは、被相続人と一緒に住んでいた土地(=親と一緒に住んでいた土地)を相続した場合に330㎡まで相続税評価額を最大80%減額する特例のことです。
例として、ここでは5,000万円の土地を相続した場合で考えてみましょう。
【小規模宅地等の特例を使わない場合の相続税】
5,000万円-基礎控除3,600万円=1,400万円
1,400万円×0.15-50万円=160万円
(※相続税の税率に当てはめて計算)
上記より、支払うべき相続税はおおよそ160万円になります。
【小規模宅地等の特例を使用した場合の相続税】
5,000万円×(1-0.8)=1,000万円
数式だけで考えれば、小規模宅地等の特例によって1,000万円に対して相続税が課されます。
しかし、ここからさらに相続税の基礎控除である3,600万円が控除されることから、土地に対する税金の支払いは生じません。。
このように、小規模宅地等の特例を適用することで、土地に対する相続税の支払いを大幅に抑えられます。
なお、被相続人が住宅として使っていた土地にこの特例を適用するためには以下のいずれかの条件を満たす必要があるので注意しましょう。
● 被相続人の配偶者が土地を相続
● 被相続人の同居人が土地を相続
● 被相続人に配偶者も同居人もいない場合、3年間借家住まいをしている相続人が取得(家なき子特例)
とはいえ、条件を満たしさえすれば、この特例から得られる恩恵は非常に頼もしいといえるでしょう。
相続した空き家を売却して利益が出た場合において、一定の条件に該当すると譲渡所得税の課税所得から3,000万円の控除を受けられます。
なお、この特例の適用を受けるためには、以下2つの要件を満たさなければなりません。
● 相続開始日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日までであること
● 特例の適用期限である2023年12月31日までであること
※被相続人が相続開始の直前に老人ホーム等に入所していた場合については、2019年4月1日以降の譲渡が対象となる。
詳しくは国土交通省が載せている資料を参照ください。
国土交通省:空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3000万円特別控除)について
取得費加算の特例とは、不動産に対する相続税を支払ったあと一定期間内に当該不動産を売却した場合に認められる仕組みのことです。
特例の適用が認められると、不動産の売却にかかる譲渡所得の計算において、支払った相続税から不動産にかかる部分の相続税を「取得費」として加算できます。
ただし、この特例を利用するためには、相続不動産を相続日から3年以内に譲渡しなければなりません。
また、課税譲渡所得金額は以下の計算式によって求められます。
課税譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除
「相続税の取得費加算の特例」が認められると、計算式の中の「取得費」が増えることから結果として譲渡税の節税に繋がります。
また、この特例を適用するためには、ほかにも以下のような条件を満たさなければなりません。
● 相続や遺贈によって財産を取得した者であること
● その財産を取得した人に相続税が課税されていること
● 相続が発生した日から3年を経過する日までに譲渡していること
詳しくは国税局のホームページでチェックできるので、あわせて参考にしてください。
参考:国税庁「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
相続後に不動産を売却するデメリットとして、相続人が複数いる場合に、手続きが煩雑になる・相続までに時間がかかるといったことが挙げられます。
また、相続人が共有で不動産を相続すると、売却時に共有持分権者全員の同意が必要です。
そのため、一人でも売却に難色を示していると、話が思うように進まなくなってしまうことがデメリットとして挙げられるでしょう。
相続税の取得費加算の特例と空き家の特別控除の適用を受けるためには、相続日から3年以内に売却することが条件です。
また、小規模宅地等の特例を適用するには相続税の申告期限まで物件を所有していなければなりません。(配偶者以外)
そのため、相続税の申告期限(相続の開始を知ったときから10ヶ月以内)まで売却せずにとっておくのも一つの手でしょう。
ただし、売却資金を相続税の支払いに充てようと思っている場合、上記の申告期限までに売却を済ませる必要があることも覚えておきましょう。
ここでは、不動産を売却して納税資金の充てる際に注意したい点についてご紹介します。
先にも述べたように、売却資金を相続税に充当する場合、10ヶ月以内に現金で一括納付をしなければなりません。
そのため、半ば強制的に売却に対してタイムリミットが設けられることになり、売却そのものを焦ってしまうケースが後を絶ちません。
よくあるケースとして、以下の事例が挙げられるでしょう。
● 売却の価格交渉で厳しい指し値に応じなければならなくなってしまった
● 想定していた価格で交渉が進まず、話がストップしてしまう
売却代金を相続税の支払いに充てようと思っている場合、なるべく期間にゆとりをもったうえで行動を開始することをおすすめします。
相続不動産は原則として、遺産分割が有効に成立し、かつ当該不動産の相続人が決まった後でなければ売却ができません。
特に相続不動産が都心部の自宅や別荘をはじめとした、利用価値が高い物件である場合には相続人全員の意見を揃えることが難しいといえます。
反対している人がいる限り、相続不動産は売却できず、結果として手元にお金が入ってこなくなってしまうでしょう。
そのため、相続税対策として相続不動産を利用することは基本的におすすめできる方法ではありません。
むしろ、相続人間トラブルの火種にもなりかねないことから、相続税は別枠でしっかりと貯めておくことをおすすめします。
今回の記事では不動産売却のタイミングについて、相続前・相続後のそれぞれを想定し、お伝えしました。
税金面だけで見れば、相続前より相続後に不動産を売却した方がメリットが多いことは事実です。
しかし、相続後に相続人間トラブルが予測される場合など、相続前に売却を済ませてしまった方がよいケースもあるでしょう。
それぞれ抱える事情が異なることから、一概にどちらが正解ということはできませんが、なるべく早いうちから話し合いを重ねておくことが大切です。
また、不動産相続はなにかと手続きが煩雑となるほか、専門知識が必要となる場面も多々見受けられます。
そのため、取り返しのつかないミスを防ぐためにも、できればプロの力を借りながら手続きを進めるように心がけましょう。
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