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東京都心部のマンション価格が上昇する中、希望の立地でマンションを購入するために、築古のマンション購入を検討されている方も多くいるかと思います。
特に最近では、リノベーションを通じて部屋(室内)の内装が新築同様の快適な空間になるため、築年数や外観の古さは気にしないという方も増えています。
もし「築50年のマンションを購入した場合、将来的にこのマンションはどうなるのだろう?老朽化した場合には、マンションの建て替えは可能なのだろうか?」といった疑問の声を多く聞きますが、今回の築50年マンションの建て替えについて、詳しく説明します。
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令和2年末時点で、築40年超のマンションは約103.3万戸あるとされています。しかしこの数は年々増加しており、10年後には約2.2倍以上の231.9万戸、20年後には約3.9倍の404.6万戸となることが予測されます。
国土交通省「分譲マンションストック戸数」によると、令和2年末時点のマンションストック総数は約675.3万戸となり、34.3%のマンションが築30年以上となります。また旧耐震基準のマンションストック総数は約103万戸となり、これは全体のうちの15.2%となります。
令和2年末時点では、15.8万戸のマンションストック数がありましたが、10年後の令和12年では103万戸、20年後の令和22年では231.9万戸と、20年後には現在の約14.6倍の数になることが予想されます。
つまり築50年のマンションの数は、現在と比較し、圧倒的に増加していくということが予測できます。
2016年に中古マンションの供給戸数が新築マンションの供給戸数を上回ったことからもわかる通り、新築マンションの供給戸数よりも中古マンションの供給戸数のほうが増えており、今後中古マンションの割合が大きくなる傾向が顕著になっています。
この状況の中、10年後、20年後には、築50年超のマンションの全体に占める割合が増えることは十分に予測できることであり、対策が必要不可欠な状況となっています。
一方で特に東京都心の利便性の高いエリアについては、新築マンションを建てる程の規模の土地が少なくなっており、今後老朽化していくマンションについては、建て替えや再生といった選択肢を含め、有効活用していくための検討の必要性が増しています。
東京都心は政治経済の中心地であり、リモートワークが増えている現在においても、住居を都心に持つことの一定の必要性や重要性を感じている人も多くいます。
また築40年あるいは築50年のマンションをリノベーションした物件、リノベーションマンションの人気も年々増していますが、今後築年数の経過したマンションについての対策の重要性は、増してきていると考えられます。
マンションの建て替え年数については、様々な考え方があります。
しかし建物の状況やエリアによっても異なるため、一概に「築50年のマンションは建替えなくてはいけない」ということにはなりません。
例えば築50年の旧耐震のマンションである者の、地盤の非常に強い土地で、大規模修繕を通じてメンテナンスがしっかりなされている、といった場合は、必ずしもすぐに建て替えが必要になるというわけではありません。
実際に築50年以上のマンションでも、しっかりと管理・運営されているマンションはあります。また大規模修繕工事を通じて、耐震補強工事を行うことで、建物の延命化を図っているマンションもあります。
しかしその一方で、老朽化が進み、維持修繕等が困難なマンションについては、建て替えが必要になるケースもあります。
過去の修繕が不十分でメンテナンスがされていないと、一般的にはその分だけ建物の劣化が早くなります。こういった劣化が早く、メンテナンスされていないマンションについては、老朽化がより進み、また維持修繕が困難になるケースもあります。このような場合は、建て替えが必要になります。
「機体耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上(国土交通省土地・建設産業局不動産業課 住宅局住宅政策課)」によると、根拠となる論文により異なるものの、鉄筋コンクリート造建物の物理的寿命は117年という考え方や、150年という耐用年数を唱える論文もあります。
寿命を大きく左右する要因として、修繕が適切に行われているか、という点があります。特に外装塗装や外壁、屋上の防水、配管等が定期的な修繕により質の良い状態にあれば、よりマンションの寿命は長くなります。
以下では建て替えに関しての、具体的な法律や事例についてみていきましょう。
それではマンションを建て替えるための条件は、どのようになるのでしょうか。
平成14年12月に「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」、すなわちマンション建て替え法が施行されました。これにより、区分所有者および議決権の各4/5以上の賛成で建替えが可能となりました。
平成26年には、「マンション建替え等の円滑化に関する法律」と法律名の改称が行われ、①マンション敷地売却制度の創設、②容積率の緩和の特例を認める、といった大幅な改正がありました。
平成26年における主な改正点は上記の通り2点となります。
「耐震性不足の認定を受けたマション」について、区分所有権者集会における4/5以上の賛成が得られれば、マンションおよびその敷地(借地権を含む)の売却を行う旨を決議できることになりました。
改正前は、区分所有者、議決権および当該敷地利用権の保有者、全員の合意が必要とされていましたが、4/5以上の賛成で売却することが可能になりました。
『耐震性不足の認定(除却の必要性に係る認定)を受けたマンションの建替えにより新たに建設されるマンションで、一定の条件を満たす場合(一定の敷地面積を有し、市街地環境の整備・改善に資するもの)について、特定行政庁が許可した場合には、容積率が緩和される』ことになりました。
つまり法律で容積率が緩和され、従来よりもより大きな建物を建て替えすることが可能になりました。
令和2年6月24日に「建替え等の円滑化に関する法律の一部を改正する法律」でが、公布されました。
改正前は「耐震不足」という条件でしたが、改正に伴い以下の2点が追加されました。
耐震性不足のマンションに加え、 外壁の剥落等により危害を生ずるおそれがあるマンション等についても、4/5以上の決議によりマンション敷地売却事業の実施ができることになりました。
耐震性不足のマンションに加え、上記の外壁の剥落等により危害を生ずる恐れがあるマンションやバリアフリー性能が確保されていないマンション等についても、容積率緩和特例の対象となりました。
マンション建て替えを行う場合、以下の流れで行うことになります。
上記手続きは、マンション建替法に基づき、行われることになります。
マンション建て替えには多額の費用がかかります。それでは各所有権者の自己負担額は、どのようになるのでしょうか?
マンション建て替えに伴う費用としては以下の項目があります。
建設費用はゼネコン、設計費用は設計事務所に支払う費用ですが、この金額は立て直すマンションのグレードにもよるため、高級マンションへの建て替えの場合は、より多額の費用がかかることになります。
自己負担額の相場は、一般的に1000万円程度と言われています。
しかしこの金額は、マンションの建つエリアや建て替え事業の収支計画により大きく変わります。
また、この1000万円が高いのか、あるいは安いのかは、マンション購入時の価格や現在のマンションの価値によって大きく変わります。
建物の解体費用や建設費用、設計費用は、同じグレードの設計や材料であれば、全国でそこまで大きく費用が変わるものではありません。
しかし土地の価格はエリアによって大きく異なり、この土地の価値によって事業の収支計画が大きく変わります。つまり同じ建築費用や設計費用でも、都心の中心であれば、建て替えに伴いマンションに余剰床を創出することで、十分に建て替え費用を賄うことができる可能性が高まります。
一方で人気のないエリアで土地の価値が低いケースだと、建て替えに伴い収益を確保することが難しいため、自己負担額が必須となったり、あるいは相場以上に自己負担しないといけなくなるケースもあります。
実際に過去の事例で自己負担額を開示しているケースがほぼないため、予測となりますが、自己負担額0円で建て替えすることは十分に可能です。
ただし資産性が高く、建て替えによって十分な収益を生み出すことができる、価値の高いマンションの場合に限られます。
自己負担額の少ない、あるいは自己負担額0円で建て替えができるマンションは、事業性のあるマンションになります。
事業性のあるマンションとはエリアが良く、建て替え後に高価価格帯での分譲が可能なマンションです。つまり建て替えにより増加した余剰床を第三者に売却することにより得た資金で、建て替え費用を回収することが可能なマンションです。
しかしこうした余剰の創出と売却が可能なマンションは、都心部などの立地が良く、資産性のあるマンションに限られてしまうというのが実情です。
それでは以下で、事業性があり自己負担額が少ないと思われる(実際には開示されないため予測となります)具体的な実施事例を見ていきましょう。
令和3年4月1日時点で、建て替え工事完了済みの件数は263件、実施中が32件、実施準備中が8件となっています(国土交通省「マンション建て替えの実施状況」)。
平成24年に工事完了数が182件だったことを考えると、81件増加しておりますが、全体のマンションストック戸数から考えると、まだまだ実施件数は少ないと考えられます。
建て替え工事が完了した263件は、令和2年末時点のマンションストック数675万件や旧耐震基準のマンションストック数103万戸から考えると、微々たる件数となっています。何故建て替えは進まないのでしょうか?
一番大きな理由は、自己負担額が大きいためです。若い世代であれば今後数十年にわたり、そのマンションで生活しなくてはいけないため、建て替えへの意欲は高くなりますが、高齢者にとっては数十年後を見据えた建て替えのメリットは感じづらいといった点があります。
自己負担額0円で建て替えが可能であればまだしも、多額の費用を自己負担してまでも、建て替えを行いたくないというのが実情です。
マンション建て替え決議で5分の4以上の賛成を得るためには、所有権者にとってのメリットが不可欠です。
建て替えを実施したマンションについて、正確にどれだけの金額を自己負担したかについては開示されていませんが、事業性のあるマンションについては好条件での建て替えを実施したケースもあるようです。
1964年に建築された「秀和青山レジデンス」は、渋谷区で初となる「マンション建替法に基づく容積率の特例緩和制度」を利用し、建て替えすることが決まりました。
現在8階建ての建物を2025年に26階建てのタワーマンションへと生まれ変わらせる計画となります。
秀和青山レジデンスは老朽化や耐震性不足についての懸念がありましたが、今回は耐震性不足と認定されたマンションに対して、建て替え時に容積率を緩和(引き上げる)特例緩和措置の適用を受けることで、建て替えを行うことになります。
1971年9月に完成した地上7階地下1階(35戸)の共同住宅を、2020年6月に地上10階地下1階(115戸)の共同住宅へと建て替え。隣接した国有地は三菱地所レジデンスが取得。
1968年10月に完成した地上11階(76戸)の共同住宅を、2021年5月に地上23階地下2階(111戸)の共同住宅へと建て替え。
道路沿いに歩道状空地を設け、周辺環境と連続した公開用地を整備。結果として容積率は400%から462%まで60%以上緩和することに成功した。
1978年に完成した地上8階(51戸)の共同住宅を2019年2月に地上25階地下1階(88戸)へと建て替え。
1929年に完成した地上4階(71戸)を2015年8月に地上14階地下1階(128戸)の共同住宅へと建て替え。
築50年のマンションを含む、耐震性不足のマンションについては、今後建て替えを検討するケースが増加していくことが予想されます。
国としても耐震性不足のマンションの数が多くなることについて、法律を整備し、対策を講じています。
「築50年のマンションは買ってはいけないですか?」という質問を数多くいただきます。どうしても住みたいエリアがあるけれども、予算や新築もしくは築浅のマンションがないために、築年数の古いマンションを検討せざるを得ないという方は、数多くいます。
築年数が古い、旧耐震のリノベーションマンションも数多く販売され、同時に購入されています。
「築50年のマンションだから買ってはいけない」ということではありません。
しかしそのマンションを購入する目的やリスクを正確に把握したうえで、購入すべきだと考えます。
マンションを購入する場合、数年あるいは10年くらいで価値が0になっても良いと考える人はいないと思います。できれば価値が落ちないマンションを購入したいと思う人のほうが、多いと思います。
そのためにも、購入したマンションが価値を維持するために、どれくらいの費用がかかるのかといったことや、建て替えの際に事業性がしっかりとあるマンションなのか、といったことも正確に把握したほうが良いでしょう。
様々な観点から分析し購入するために、信頼のおける不動産仲介会社に依頼し、相談するようにしましょう。
石黒雅規
株式会社I-House
慶応義塾大学経済学部卒業後、American Universityで経済学、Columbia Universityで統計学の修士課程を修了
宅地建物取引士/住宅ローンアドバイザー
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