住宅ローン・金融
住宅ローンが通らない理由とその対処法とは|審査基準と併せて解説
2022.01.04
住宅ローン・金融
2021.09.12
中古マンションやリノベーションマンションを購入するとき、月々の返済金を少なくしたい思いから、変動金利型の住宅ローンを選択する人は非常に多いです。変動金利は、借り入れ当初の金利が低く月々の返済金額を抑えられますし、当分この低金利時代が続くと考えている方が多いためです。。
しかし目先の月々の返済額だけを考えて、住宅ローンの金利を選択するのはおすすめできません。何故なら住宅ローンは長期間(多くの方にとっては35年間)返済し続けるものであり、その長期間においては金利はどのように変化し(上昇し)、その金利の変化が家計に対して大きな影響を及ぼす可能性があるためです。
住宅ローンの金利を選択する際には、変動金利の特徴を理解し、長期間において返済するということを前提にメリット・デメリット、そしてリスクを把握したうえで、固定金利と比較して選ぶことが大切です。
今回は、住宅ローン契約を締結する際に必要な、変動金利の特徴・リスクや、固定金利の特徴について解説していきます。
住宅ローンを借りた場合、元本の返済と合わせて利息を支払います。住宅ローンの金利は、毎月の返済額に占める利息額を計算する際に用いられます。金利が高いほど、毎月の返済額や利息額も大きくなります。
住宅ローンの金利は、大きく分けて「変動金利」と「固定金利」の2種類です。まずは変動金利と固定金利の基本的な仕組みを、簡単にご紹介します。
変動金利型の住宅ローンは、市場や経済情勢などの影響を受けて金利が変化した場合、返済の途中で住宅ローンの金利も変更になるという商品です。
金利が見直されるタイミングは、半年に1度が一般的です。また多くの変動金利型の住宅ローンには、金利が上昇しても返済負担が急激に増加し家計を圧迫しないよう、以下2つの仕組みが設けられています。
5年ルールにより、金利が変わっても借入開始(住宅ローン実行時)または前回の返済額見直しから5年が経過していなかった場合、毎月の返済額は変わらず借入元本と利息の内訳のみが変わります。つまり5年間は金利上昇に伴う返済額上昇を防ぎ、リスクヘッジをするということです。
125%ルールについては、このルールが適用されることで、金利が変化しても一定の額までしか返済額が増えないというメリットを得ることができます。例えば、住宅ローン金利変更前の返済額が毎月15万円であった場合、見直し後の返済額は15万円x1.25=18.75万円が上限となります。このルールを適用することにより、急激な返済額上昇に伴い返済できなくなるというリスクをヘッジしています。
固定金利とは、住宅ローン開始時から全期間、もしくは一定期間の金利が固定される住宅ローンです。
住宅ローンを完済するまで、すなわち借入から返済までの期間の金利が固定される金利タイプを「全期間固定金利」といいます。全期間固定金利で借り入れを行った場合、返済途中で住宅ローン金利が変動しても、住宅ローンの金利は変わりません。
借り入れから5〜10年などの一定期間、金利を固定する住宅ローンを「固定期間選択型」といいます。足元の経済状況が大きく変化しているときは、このタイプを選択すると、5年から10年間は金利が固定されるので、メリットがあります。例えば2021年後半は、アメリカやヨーロッパの金利が上がるという傾向ですが、この場合金利が上がる前に固定金利型の住宅ローンを組むことにより、一定期間の金利上昇によるリスクを回避することができます(アメリカやヨーロッパの例となります)。
住宅金融支援機構の調査によると、住宅ローンを利用して中古マンションを購入した人が選んだ金利タイプの割合は以下の通りです。
※出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者調査(2021年4月調査)」
※カッコ内の数値は、中古マンションだけでなく注文住宅や新築マンションなどの購入者も含めた住宅ローン利用者全体の割合
調査結果から分かるとおり、住宅ローンを借り入れて中古マンションを購入した人の69.4%が変動金利を選択しています。一方で、全期間固定金利型の住宅ローンを選んだ人は、10%に過ぎません。住宅ローンを利用した人の全体においても、若干の数字の違いはあるものの、同様の傾向が見られます。
同調査によると、変動金利を選択した人のうちの77.4%が、選んだ決め手として「金利が低い」ことを理由としてあげています。実際に多くのマンション購入を検討される方と話をしても、まず目先の支払額を重視するために、金利の差を重視するケースが非常に多いと感じています。
2021年8月現在、住宅ローンの変動金利はおおむね0.4%~1%未満であり、最低値は0.375%です。民間金融機関の住宅ローン金利推移をみてみましょう。1984年から1992年前後までのバブル時代の変動金利が6〜8%程度であったことを考えると、2021年現在の変動金の利率は約1/10未満とも考えることができ、大幅に低下していることがわかります。
*出典:民間金融機関の住宅ローン金利推移(変動金利等)
住宅金融支援機構 フラット35のHPより
一方で、全期間固定金利はおおむね1%強であり、変動金利とは大きな差があります。
ここで、変動金利と全期間固定金利の月々返済額がどれほど違うのか、比較してみましょう。条件は以下の通りです。
三井住友銀行の「新規借り入れシュミレーション:https://www.smbc.co.jp/kojin/jutaku_loan/simulation/shinki01/」により、以下のシュミレーションをしてみました。
2. 固定金利特約型10年: 1.0%
3. 全期間固定金利型: 1.35%
6500万円のケースと同様に、三井住友銀行の「新規借り入れシュミレーション:https://www.smbc.co.jp/kojin/jutaku_loan/simulation/shinki01/」により、以下のシュミレーションを実施してみました。
2. 固定金利特約型10年: 1.0%
3. 全期間固定金利型: 1.35%
このようにそれぞれの金利条件により、支払総額が大きく異なることがわかります。
【関連記事】住宅ローンの返済比率とは?返済率の計算方法や目安、注意点について解説
しかしこの金額のみで判断しても良いのでしょうか?
これから住宅ローンを組もうとしている方にお伝えしたいのが、借入当初の月々の返済や返済総額のみで変動金利を選んでは危険だということです。
変動金利で住宅ローンを借り入れると、この名前の通り、返済の途中で金利が上昇して返済負担が増える可能性があります。完済まで低い金利が続く保証がないからこそ、固定金利よりもリスクが低いのです。
言い換えると、金利上昇のリスクを回避できるために、固定金利のほうが金利が高いのです。 言い換えると、変動金利型の住宅ローンは金利上昇のリスクに常にさらされているということができます。
変動金利で借り入れたあと、返済の途中で金利が上昇するのは、基本的には景気が良くなり、少しずつ景気上昇を抑制していこうと政府が判断したタイミングからです。新型コロナウイルス感染症の感染拡大が収束し、景気が上昇局面になるだけでは金利は上がらないと思われますが、これに物価の上昇が加わり一定の水準を超えてくる(例えば日銀がターゲットとしている消費者物価指数2%の達成など)と、金利が上昇し返済負担が増える可能性があります。
「金利が上がり始めたら固定金利に借り換えれば良い」と考えて変動金利を選ぶ方もいます。しかし、借換え時に銀行保証料や登記費用(抵当権設定)が発生したり、そのタイミングでは固定金利の条件も上がっていたりと、当初想定した以上にメリットが少ないケースも多々あります。
変動金利住宅ローンの未払利息とは、一般社団法人 全国銀行協会によると「未払利息は、変動金利型の住宅ローンで発生する可能性があります。急激な金利上昇が起きた時に、毎月支払うべき利息の金額が返済額よりも多くなってしまうと未払利息が発生します。」となります。
言い換えると、金利上昇に伴い支払利息が増えるため、一定水準以上の金利が未払利息として残ってしまうことです。
*出典:一般社団法人 全国銀行協会
未払利息が発生すると、ローンの元金に対する返済額が少なくなるため、住宅ローン残高自体が減らなくなり、利息のみを支払っていく期間が続いてしまいます。また未払利息は、その文字通り未払いの利息であるため、その利息は蓄積されていきます。その後、適用金利の変更等により未払利息が解消される可能性は皆無ではありませんが、金利条件が改善しない場合は、未払い利息は解消されず蓄積されてしまい、将来の返済額が当初の想定以上に残ってしまうことになります。これが未払利息のリスクとなります。
変動金利には、5年ルールや125%ルールがあるため、金利が急上昇しても実際に月々の返済額が急激に増えるということはありません。
しかし上記の通り、金利の上昇によって、利息額が返済元金を上回った場合は、未払利息が発生します。未払利息は、住宅ローンの完済時に一括返済しなければならないため、当初に計画していた以上の資金が最後に必要になってしまうリスクがあります。
このような未払い利息のリスクに対応するためには、金利が上昇した場合、繰上げ返済を行い借入元本を減らすと、返済負担の増加を緩和することができます。しかし多くの家庭にとって、住宅ローンを返済する期間は、子供の学校や塾等、人生で一番お金がかかる期間と重なるケースが多く、そう簡単に繰上げ返済が可能になるわけではありません。
このため5年ルールや125%ルールがあるからと言って、目先の金利水準のみで変動金利型の住宅ローンを選択することは危険を伴います。
変動金利あるいは固定金利で住宅ローンをを借り入れるときは、まず仕組みやリスクを理解することが大切です。そして返済負担が増えても生活に支障が出ないのか、万一に備えて繰上げ返済できるのかを準備ができるのかを考える必要があります。
多くの方が物を買うときにはしっかりと比較検討・理解するにもかかわらず、住宅ローンについては仕組みを理解せず、また固定金利型の住宅ローンとも比較せず、目先の返済額のみで変動型住宅ローンに決めてしまうケースが非常に多い印象を受けます。
”人生で最大の支出”となる住宅ローンですので、銀行や不動産仲介と納得いくまで話し、理解することをおすすめします。
もし購入したマイホームでの暮らしで金利上昇の不安を一切抱えたくないと考えているのであれば、変動金利だけでなく固定金利を検討するべきです。
ここまで変動金利のリスクをお伝えしましたので、ここからは全期間固定金利のメリットやデメリットについて解説します。まずは全期間固定金利のメリットを、2点ご紹介します。
変動金利で借り入れると、返済負担が増えるリスクを抱えながら生活していくことになります。金利が上昇する可能性が低いと考えて変動金利を借り入れたものの、返済額の増加に不安を抱えながら生活をする方は少なくありません。
全期間固定金利であれば、借り入れたあとに返済負担が増えてしまう心配はありません。
全期間固定金利は、借入時に毎月の返済額や総返済額が確定するため、完済までの資金計画が立てやすいといえます。
この資金計画を、住宅ローン借入当初のタイミングで決定できることにより、振れ幅の少ない長期の式計画を構築することが可能ですし、またこの計画があれば、人生の様々な局面でより確度の高い決断ができるかもしれません。
住宅を購入したあとも、子どもの塾や学校といった学費や、車の購入・買い替え、旅行など、まとまった資金が必要なライフイベントが発生します。また2000万円問題に代表される老後資金についても、必要な資金を計画的に準備しなければなりません。
一方で全期間固定金利には、2点のデメリットがあります。
全期間固定金利は、借り入れ当初の金利が変動金利よりも高めに設定されているため、毎月の返済額も変動金利で借り入れたときより高くなります。
「変動金利で借りたら返済できるけど、全期間固定金利だと返済が厳しそう」という方は、そもそも余裕がない状態で住宅ローンを借り入れているため、大きなリスクを抱えることになります。このような方は、金利が上昇したときの打ち手を事前に考えておくか、住宅購入の予算から見直しが必要な可能性があります。
全期間固定金利を借り入れた当初の返済額は、変動金利よりも高くなります。住宅ローンの金利水準が低いときに全期間固定金利を選んだ場合、その後も低金利が続くと、返済総額や利息額が変動金利より高くなります。
日銀の黒田総裁は2021年9月7日の記者会見で「強力な金融緩和を続け、目標(2%の物価上昇率を実現)を達成することに尽きる」というコメントを出しています(2021年9月13日 日経電子版 「日銀が陥ったジレンマ 2%目標遠ざける財務リスク (金融PLUS 金融グループ長 河浪武史)より)。
足元の金融情勢を勘案すると、日本においてすぐに金利が上がることは考えづらい状況です。
このように考えると変動金利のほうが良いと思われますが、35年間という長期間で考えた場合、どのようなリスクが発生するかはわかりません。日本で35年前というと、まだバブルが崩壊する前の時代です。
将来どのように金利が変化するかわからないと考える倍、変動金利と全期間固定金利の返済負担の差は、安心を得るための対価であるとも考えられます。
変動金利より返済負担が高くなる可能性が高いとしても、将来における金利上昇リスクを回避し、金利が変わらない安心を優先したい方は全期間固定金利を選ぶとよいでしょう。
フラット35とは、民間の金融機関と住宅金融支援機構が提携して融資をする全期間固定金利型の住宅ローンです。
フラット35には、所定の要件を満たすと金利が引き下げられる以下のようなメニューが用意されています。できるだけ返済負担を減らして全期間固定金利を借り入れたい方は、フラット35を検討してみてはいかがでしょうか 。
*出典:住宅金融支援機構 フラット35
○フラット35S
○フラット35リノベ
○フラット35地域連携型
フラット35の借入金利は、購入価格に対する借入額の割合が9割以下、借入期間が21年以上35年以下である場合、おおむね1.28%です。※2021年8月現在の金利。フラット35の借入金利は、申し込む金融機関によって異なります。
例えばフラット35の借入金利が1.28%であった場合、フラット35Sが適用されると借入当初の5年または10年間は、借入金利が1.03%に引き下げられます。
また自営業や転職したばかりの方、契約者員など住宅ローンの審査に通過しにくい方でも、フラット35であれば融資が承認されやすいです。金利上昇の不安を抱えたくない方だけでなく、銀行で住宅ローンの融資を断られてしまった方にとっても、フラット35は有効な選択肢といえます。
中古マンションを含む住宅を購入する人の多くは、金利が低い変動金利型の住宅ローンを選択しています。
しかし変動金利には、金利が上昇するリスクがあります。また35年という期間で見た場合、10年後あるいは20年後に景気が回復し金利が上昇すると、返済負担が増加して家計を圧迫するかもしれません。
住宅ローンの返済は、長期にわたります。金利上昇に対する不安を抱えたくないのであれば、固定金利もぜひ検討してみてください。
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更新日時:2021年9月13日
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